2020年01月01日

「通常の監査手続」とは

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平成3年改正より前の監査基準には「財務諸表監査において監査人が、通常実施すべき監査手続であって、実施可能にして合理的である限り省略してはならないもの」として「通常の監査手続」が具体的に示されていました。

リスクアプローチ監査に合わないということで、現行基準では削除されていますが、今でも役に立つ内容を含んでいますので、紹介することにしました。

利用方法としては、例えば、小規模企業の監査手続策定や監査以外の業務(財務調査など)の参考にすることが考えられます。

テキストには、手元の資料の関係で、昭和58年2月最終改正のものを使っています。

「通常の監査手続」の構成


「通常の監査手続」は、旧基準では、以下のような構成となっていました。

一 個別財務諸表に係る通常の監査手続
(1) 予備調査の手続
(2) 取引記録の監査手続
(3) 財務諸表項目の監査手続

二 連結財務諸表に係る通常の監査手続
(1) 予備調査の手続
(2) 基礎的事項の監査手続
(3) 連結決算の監査手続
(4) 連結財務諸表の表示方法の監査手続

当サイトでは、「取引記録の監査手続」と「財務諸表項目の監査手続」は、「財務諸表項目の監査手続」の配列に従い、一括して科目別にまとめました。これに伴い、項目の表題に若干の修正を加えています。また、「連結財務諸表に係る通常の監査手続」は省略しました。

「取引記録の監査手続」と「財務諸表項目の監査手続」


それぞれの手続の目的は以下のとおりです。

「取引記録の監査の目的は、会社の内部統制組織が実際に有効に運用されているかどうか及び取引記録が「企業会計原則」に継続的に準拠しているかどうかを調査することにより、取引記録の信頼性の程度を確かめることにある。」

「財務諸表項目の監査の目的は、取引記録の監査の結果得られた信頼性の程度に照応して、勘定残高の当否を確かめ、更に財務諸表の表示方法の妥当性を検討することにより、財務諸表が「企業会計原則」に継続的に準拠して作成され、会社の財政状態及び経営成績を適正に表示しているかどうかを確かめるにある。」

ここでいう「企業会計原則」は、それ以外の基準や指針を含む「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」と読み替えるべきでしょう。

また、期中の勘定残高について手続を実施する場合について以下のようにふれています。

「財務諸表項目のうち、必要と認められる項目についての監査手続が、決算日以外の日における勘定残高について実施された場合には、決算日との間の取引に関する資料又は記録を検討して、決算日における勘定残高の妥当性を確かめる。」

注意事項(現行実務との相違点など)


・現行実務では、虚偽表示に関するリスク評価を行ったうえで、それに対応する手続(種類・実施時期・範囲)を策定することが求められており、どの企業にも当てはまる一律の監査手続はないという考え方です。したがって、「通常の監査手続」はあくまで手続策定上の参考として使うことになります。

・現行実務では、企業の理解(内部統制の理解を含む)をまず行うことが必要ですが、「通常の監査手続」では、それらは予備調査という非常に軽い扱いになっています。

・現行実務では、内部統制を評価する手続と実証手続は明確に分かれていますが、「通常の監査手続」では「取引記録の監査手続」の中に統制評価手続と実証手続が混在しています。

・継続企業の前提に関する検討や経営者確認書の入手など現行実務上必須となっている手続についてはふれていません。また、いわゆる会計ビッグバン以後の会計基準の変更にも対応していません。

・「通常の監査手続」は、「商工業を営む会社で、適当な内部統制組織を有するもの」を監査する際の手続です。

目次


予備調査の手続

1.初度監査の予備調査
2.連続監査の予備調査

科目別監査手続

1.現金預金
2.手形債権(受取手形)
3.売掛金
4.貸付金
5.有価証券
6.たな卸資産と売上原価
7.有形固定資産と減価償却費
8.繰延資産
9.手形債務(支払手形)
10.買掛金
11.借入金
12.経過項目
13.引当金
14.資本
15.売上高
16.販売費及び一般管理費
17.仮勘定
18.偶発債務
19.後発事象
20.親会社、子会社、関連会社等に対する諸項目(親会社、子会社、関連会社等との取引
21.財務諸表の表示方法

関連サイト

会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所) 

 
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2008年05月04日

2.連続監査の予備調査

 監査人が、前年度から連続して財務諸表監査を行う会社について実施する予備調査においては、1の調査事項のうち、会社の採用する会計処理の原則及び手続並びに内部統制組織等の重要な事項についての変更の有無を確かめ、変更が行われたときは、当該変更の内容及び理由を調査する。


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1.初度監査の予備調査

 監査人が初めて財務諸表監査を行う会社について実施する予備調査の手続は次のとおりである。

(1)会社の概況を把握するため、会社の沿革、業務内容、資本系統、金融関係、役員及び関係職員の氏名、職責、取引先関係、取引条件その他監査のために必要な重要事項について、関係書類等を閲覧し、又は責任者に質問して調査する。

(2)会社の過去における経営成績、財政状態、利益処分及び資金状況の概要を把握するため、過年度の財務諸表等を調査する。

(3)内部統制組織の信頼性の程度を確かめるため、内部統制の質問書に回答を求める等、適当な方法によってその整備の状況を調査する。

(4)経理規程、その他の書類又は会社の慣行を検討して、会社の採用する会計処理の原則及び手続が「企業会計原則」に準拠しているかどうかを調査する。

(5)原価計算規程、その他の書類又は会社の慣行を検討して、会社の採用する原価計算の手続が「原価計算基準」に準拠しているかどうかを調査する。

(6)事業年度の開始日における重要な貸借対照表項目の勘定残高につき、必要な範囲において過年度にさかのぼり、その当否を確かめる。
 会社が前年度において他の監査人の監査を受けた場合には、その監査の内容を明らかにする書類を精細に閲覧し、適当と認めるときは、前段の手続を省略することができる。


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21.財務諸表の表示方法

財務諸表項目の監査手続

 財務諸表の表示方法については、関係資料を調査して、それが一般に公正妥当と認められる財務諸表の表示方法に関する基準に継続的に準拠しているかどうかを検討し、財務諸表が、利害関係者に対し、会社の状況に関する判断を誤らせないため必要な会計事実を明瞭に表示しているかどうかを確かめる。
 財務諸表の表示方法について、法令の定めがある場合には、当該法令に継続して準拠しているかどうかを確かめる。


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20.親会社、子会社、関連会社等に対する諸項目(親会社、子会社、関連会社等との取引)

取引記録の監査手続

 親会社、子会社若しくは関連会社等との取引、役員、主要株主若しくはそれらの親族が議決権の過半数を直接若しくは間接に所有している関係にある会社との取引又は取締役総数の過半数を派遣し、かつ、継続的な取引を有する関係にある会社等との取引については、関係事項を照会して文書による回答を求め、必要に応じて当該会社に往査し、その処理の妥当性を確かめる。

財務諸表項目の監査手続

 親会社、子会社、関連会社等に対する諸項目については、関連事項を照会して文書による回答を求め、必要に応じて当該会社に往査し、売上高、仕入高、売上債権、貸付金、投資等の重要な勘定につき、残高の妥当性、回収可能性等を検討し、買入債務、借入金等の重要な負債項目については、これらがすべて計上されているかどうかを確かめる。


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19.後発事象

財務諸表項目の監査手続

 後発事象については、貸借対照表日後に発生した状況に関し、責任者に対する質問、関係書類の閲覧、外部関係者に対する照会等を行い、必要に応じて証拠資料を調査してその有無、内容及び金額を確かめる。


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18.偶発債務

財務諸表項目の監査手続

 偶発債務、手形の裏書又は割引、訴訟事件、損害賠償等に関連して発生する偶発債務については、責任者に対して質問を行い、又は証拠資料を調査してその存在の有無、内容及び金額を確かめる。


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17.仮勘定

取引記録の監査手続

 仮払金、仮受金等の仮勘定が設けられている場合には、その増減の多額なものについて証拠資料を調査し、その処理の適否を確かめる。

財務諸表項目の監査手続

 仮勘定については、勘定分析等により、勘定科目又はその金額が決算日において未確定のものであるかどうかを確かめる。


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16.販売費及び一般管理費

財務諸表項目の監査手続

 販売費及び一般管理費については、勘定分析等により計上額の妥当性を確かめる。

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15.売上高

取引記録の監査手続

(1)商品又は製品等の受注から発送に至るまでの証拠資料を調査して、必要と認めた場合には販売条件を検討し、販売の手続が所定の手続に従っているかどうかを確かめる。

(2)売上高の計上の基礎となる証拠資料を調査して、売上高が所定の基準に継続的に準拠して適正に計上されているかどうかを確かめる。

(3)売上勘定を分析して、これに算入してはならない項目が混入していないかどうかを確かめる。

(4)売上勘定の記帳につき、現金販売については現金勘定と、信用販売については売掛金勘定と、手形販売については受取手形勘定と照合し、売上勘定の計上と同時に売上金額をもってこれに対応する勘定科目に記入がなされているかどうかを確かめる。

(5)売上控除項目については、売上値引、売上返品その他の事実の有無を証拠資料によって調査し、適正な会計処理が行われているかどうかを確かめる。

財務諸表項目の監査手続

(1)売上高が実現主義の原則に従って計上されており、次期の売上を当期に繰上げ、又は当期の売上を次期に繰下げて計上していないかどうかを確かめる。

(2)売上高の計上につき、割賦基準、工事進行基準その他特殊な基準を採用している場合には、証拠資料を調査して、当該基準の適用が事実に基づいているかどうかを確かめる。

(3)商品又は製品の販売による売上高と役務の給付による収益が正しく区別されているどうかを確かめる。

(4)内部売上高及び内部利益については、証拠資料を吟味して、処理の妥当性を確かめる。

(5)売上控除項目については、その内容を分析して、処理の妥当性を確かめる。


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14.資本

財務諸表項目の監査手続

(1)新株が発行されたときは、適正に払い込みが行われたかどうかを確かめる。

(2)資本剰余金及び利益剰余金については、勘定分析等により残高の妥当性を確かめる。


posted by 小石川経理研究所 at 13:06| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

13.引当金

財務諸表項目の監査手続

(1)引当金については、証拠資料を吟味し、設定した根拠の当否を確かめ、特に引当金が利益留保の性格を有するものでないかどうかを検討する。

(2)引当金が、所定の基準に継続的に準拠し適正に計上されているかどうかを確かめる。

(3)引当金の取崩しについては、その根拠と計算の適否を吟味する。


posted by 小石川経理研究所 at 12:36| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

12.経過項目

財務諸表項目の監査手続

 前払費用、未払費用、前受収益又は未収収益については、帳簿記録等により内容を分析し、その処理が所定の基準に継続的に準拠し適正に行われているかどうかを確かめる。


posted by 小石川経理研究所 at 12:31| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

11.借入金

財務諸表項目の監査手続

(1)借入金については、借入先からの残高証明書を求め又は借入先に対して確認を行い、借入金の明細表及び関係帳簿残高と照合し、勘定分析等により残高の妥当性を確かめる。

(2)前記の明細表及び帳簿記録により内容を分析し、責任者に対して質問を行い、すべての借入金が計上されているかどうかを確かめる。


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10.買掛金

取引記録の監査手続

(1)買掛金勘定における記帳につき、商品、原材料等の購入に関する記録と照合し、架空又は不当な買掛金の有無を確かめる。

(2)買掛金の支払いを行った場合には、現金勘定又は預金勘定に相当する記録が行われているかどうかを確かめる。
 買掛金の支払いのために手形を振り出した場合には、支払手形勘定について同様の監査を行う。

財務諸表項目の監査手続

(1)買掛金の明細表と関係帳簿残高を照合し、勘定分析等により残高の妥当性を確かめる。

(2)前記の明細表及び帳簿記録により内容を分析し、責任者に対して質問を行い、すべての買掛金が計上されているかどうかを確かめる。

(3)必要と認めた場合には、債権者に対して確認を行う。

(4)未払金については買掛金に準じて監査する。


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9.手形債務(支払手形)

取引記録の監査手続(支払手形)

(1)商品、原材料等の購入によって振出した手形については、買掛金に準じて監査する。

(2)商品、原材料等の購入に関して振出した手形と金融手形が混同して記帳されていないかどうかを確かめる。

財務諸表項目の監査手続

(1)手形債務に関する明細表と関係帳簿残高を照合し、勘定分析等により残高の妥当性を確かめる。
 特に金融手形その他商品、原材料等の購入に関して振出した手形以外の手形については、その有無を調査し、処理の妥当性を確かめる。

(2)前記の明細表及び帳簿記録により内容を分析し、すべての手形債務が計上されているかどうかを確かめる。

(3)必要と認めた場合には、債権者に対して確認を行う。


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8.繰延資産

財務諸表項目の監査手続

(1)繰延資産の内容を分析して、これを次期以降に繰延べることの適否を吟味する。

(2)繰延資産の償却が、所定の基準に継続的に準拠し適正に行われているかどうかを確かめる。


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7.有形固定資産と減価償却費

取引記録の監査手続

(1)固定資産の増加高については、その内容を吟味し、これを資本的支出として固定資産に算入することの当否を調査し、必要と認めた場合には現場を視察する。

(2)固定資産に関する支出については、その承認に関する書類を閲覧し、正当な科目によって処理されているかどうかを調査するとともに、その価額が承認額を超過している場合には、その事由を吟味する。

(3)固定資産の減少高については、その内容を分析し、売却、廃棄、事故等による損失が正当に記帳されているかどうかを確かめる。

財務諸表項目の監査手続

(1)固定資産の種類別に期首残高、当期増減高及び期末残高を記載した明細表の内容を分析し、残高の妥当性を確かめる。

(2)減価償却費の明細表により減価償却が、所定の基準に継続的に準拠し適正に行われているかどうかを確かめる。

(3)無形固定資産については、有形固定資産に準じて監査する。




posted by 小石川経理研究所 at 11:22| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

6.たな卸資産と売上原価

取引記録の監査手続(仕入高)

(1)商品又は原材料等の発注から受入れに至るまでの証拠資料を調査して、必要と認めた場合には購買条件を検討し、購買の手続が所定の手続に従っているかどうかを確かめる。

(2)仕入高の計上の基礎となる証拠資料を調査して、仕入高が所定の基準に継続的に準拠し適正に計上されているかどうかを確かめる。

(3)仕入勘定を分析して、これに算入してはならない項目が混入していないかどうかを確かめる。

(4)仕入勘定等の記帳につき、買掛金勘定、現金勘定、支払手形勘定と照合し、商品、原材料等の購入が正しく記録されているかどうかを確かめる。

(5)仕入控除項目については、仕入値引、仕入返品その他の事実の有無を証拠資料によって調査し、適正な会計処理が行われているかどうかを確かめる。

取引記録の監査手続(製造費用)

(1)材料費、労務費及び経費についてはその計算記録を証拠資料と照合し、所定の原価計算の手続が継続的に適用されているかどうかを確かめる。

(2)仕掛品、半製品、製品等の原価については、その計算記録の過程を分析し、所定の原価計算の手続が継続的に適用されているかどうかを確かめる。

(3)原価計算に関する記録と製造勘定等の記帳を照合し、原価計算及び記帳が正確に行われているかどうかを確かめる。

財務諸表項目の監査手続

(1)たな卸資産については、実地たな卸の立会を行い、倉庫業者、運送業者その他に保管されているたな卸資産については、倉荷証券、貨物引換証等を実査し、又は保管者に対して確認を行う。

(2)実地たな卸と帳簿たな卸の結果を照合し、差異については、その処理の妥当性を確かめる。

(3)たな卸資産の評価が、所定の基準に継続的に準拠し適正に行われているかどうかを確かめる。

(4)評価損を計上すべき場合に、それが適正に計上されているかどうかを確かめる。評価損が計上されている場合には、計上の根拠と計算の適否を吟味する。

(5)売上原価については、その内容を分析して、それが適正に計上されているかどうかを確かめる。


posted by 小石川経理研究所 at 02:39| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

5.有価証券

財務諸表項目の監査手続

(1)会社が現に保有する有価証券については、実査又は立会を行い、他に保管されている有価証券については、保管に関する証書若しくは通帳を閲覧し、又は保管者に対して確認を行い、有価証券の明細表及び関係帳簿残高と照合する。

(2)有価証券の明細表により有価証券の評価が、所定の基準に継続的に準拠し適正に行われているかどうかを確かめる。

(3)評価損を計上すべき場合に、それが適正に計上されているかどうかを確かめる。評価損が計上されている場合には、計上の根拠と計算の適否を吟味する。


posted by 小石川経理研究所 at 02:22| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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